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日経新聞 2009年5月20日(水)付け 15面【投資・財務2】12版
増収増益企業を探る 医師向け情報サイト「ソネット・エムスリー」 |
昨年下期から続いている米国発金融危機端を発した不況の中でも増収増益の企業はある。
そうした企業はどのような事業モデルなのだろうか。増収増益のポイントは何だろうか。
今回取り上げる記事はインターネットというツールがなければ成立は難しい。
ネットを有効に使うことで現在の事業にどのような可能性があるのか、事例をもとに試行錯誤しておきたい。 |
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医師向け情報サイトの事業モデル
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この図は編集者の独自の解釈で作成しているものです。対象となった記事とは関係ありません。 | |
■ 記事の概要 |
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2003年から運営する医師向け情報サイト【M3.com】は会員数が2009年3月期末で17万4千人に増え、
国内医師の六割強をカバーするまでになった。
サイトの概要は、
・医療ニュースや専門文献を閲覧・検索できる。
・最近は独自の取材を交えた新型インフルエンザの関連情報も掲載。
登録は無料だが、この大量の会員を活用して医師に医薬品情報をメールで配信し、
製薬会社から対価を得るのがエムスリーの事業モデルだ。
年7千万円の基本料金のほか一会員に一回メールを送るごとに百円を受け取る。
製薬会社のMR(医療情報担当者)の仕事を代行するのでサービス名は「MR君」。
エムスリーの売上高の六割を占める主力事業だ。
3月末で契約する製薬会社は26社。前記は一社平均二億円を受け取った。
一般の交流サイトに比べてシステム容量は小さくて済むこともあり、
売上高営業利益率は50%近くに達する。
製薬会社がコスト削減姿勢を強めていることもあるが、
むしろ地方の医師などにネットを使って製薬会社の営業機会を広げたところ事業拡大の原動力がある。
「ネット企業なので初期投資は軽い」(谷村社長)。
谷村社長はもとはマッキンゼーのコンサルタント。
ソニー子会社のソネットエンタテインメントに医療サイト立ち上げをアドバイスしていたところ、
共同出資で自分が経営することになり今に至る。
エムスリーの医師会員数と会員が読んだメールの数は次の通りだ。
2009年3月で会員数17万人超、メール数は4千万通超。
コメント
インターネットの特徴をよく理解する。
自らの事業に応用展開していくというコンセプトが端的に示されているのではないでしょうか。
こうした事例は他にもたくさんある。その中で成功しているのは数少ないというのも事実です。
なぜ、そうしたことが起きるのでしょうか。一つ言えるのはターゲットの選択ではないでしょうか。
ターゲットは一つでもない。ターゲットはさらに複合的かつ階層的になっているかもしれない。
事業領域は、市場のニーズと市場のターゲット層と独自技術で決まるわけです。
自社の商品・サービスはこの3つ要素で提供の仕方にも変化が生じてくる。
また、コミュニケーションの取り方や意思決定のプロセスもターゲット層によって違う。
事業領域にふさわしいネットの活用とコミュニケーションのあり方が差別化につながっていく。
こうしたネットの情報システムにはターゲットニーズに必要なインフラを整えなくてはならない。
参加企業、エンドユーザー(ターゲット)にストレスなく使っていただくために、
情報システムの革新は事業の将来に大きな影響を与える。
事業運営側には一歩先を行くマーケティング・スキル、情報システム構築やコンピュータの技術革新を活用していくスキルが求められる。
私が注目しているのは三つです。
まず、ユーザーにどのようにアプローチしてこちらを振り向いてもらっているのか。
二つ目は、事業モデルの革新・進歩を継続させていく戦略的、強靭なビジョンです。
もうひとつは、利用するユーザーの満足のいくコンテンツの編集能力です。 |
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■ 編集後記
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東京都立川市にある都立多摩図書館では、いままでの開架式の図書閲覧をやめて、
パソコン検索に変更し、ワンフロアーをほぼすべてマガジン専用の閲覧にスペースにした。
東京マガジンバンクという名称だ。
閲覧の座席数も増え、余裕があって気分がいい。フロアーも以前より明るくなって開放的だ。
私が最も好きな図書館のひとつです。
ただ、開架式は継続して欲しかった。
自分の足で書架を巡り、自分の眼で背表紙で確かめ、本を手にとってみる感覚は捨てたくない。
パソコン検索で見たい本を取り寄せるのはその書架にないものはしょうがないが、
すべてそうなるのはなんともさびしい。
本というあったかいものが遠ざかっていくようで、無機質的になるのがちょっと気になる。
「魔女と野獣」のアニメにあるような巨大な書架を人間は体自身で感じていなければ、
薄っぺらな人間になるような気がする。 |
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